『日本アニメーション映画史』とは?

『日本アニメーション映画史』(山口且訓・渡辺泰著、プラネット編、有文社、358頁)は、1977年に初版が出版され、計1万部が発行されました。発行元の出版社はすでになく、2025年3月現在、入手困難な絶版書籍です。
この本に収録されている「第三部 資料編 作品目録」は、タイトルやクレジット情報の欠落したアニメーションの映画フィルムを手にした人が、最初にひもとく参照文献といえ、作品同定のための必携書として、アニメーションフィルムの収蔵機関などで使用されてきました。
日本では、アニメーション映画は1917年頃から作られるようになりますが、映画を長期的に保存するという思想や仕組みが育たなかったことなどから、ほかのジャンルの映画と同じように、映画館での上映が終わると廃棄されたり再利用されたりして、フィルムの大部分が失われました。その一方で、アニメーション映画は、学校や家庭向けの販売ソフトとしても流通し多数頒布されてきたおかげで、比較的多くの作品が残っているともいえ、それらを今日も見ることができます。
日本で製作・公開されたアニメーション映画の網羅的なタイトル一覧は、公式には存在しません。部分的なものではあれ、『日本アニメーション映画史』の作品目録は、戦前・戦中に製作された(いわゆる「古典」)アニメーション映画について、当時フィルムがすでに失われていたタイトルも含めて調査・編纂をしており、これを上回る一覧の出版は以後もなく、基礎資料として繰り返し参照されてきました。しかしながら、編集したプラネットの安井喜雄(現・神戸映画資料館館長)ほか関係者は、出版当時は失われたと思われていたフィルムの発見や詳細な調査が進むなか掲載情報更新の必要を感じ、増補や改訂の出版を長らく希望していました。

作品目録 1917〜1977
『日本アニメーション映画史』所収の「第三部 資料編 作品目録」は、杉本五郎監修のもと、山口且訓の先行研究を基礎に、渡辺泰の詳細な調査と、安井喜雄の資料集めにより編纂されたものです。初版本では、191頁から353頁までの163頁にわたって、1917(大正6)年から1977(昭和52)年6月の間に日本で製作されたアニメーション映画(テレビシリーズを除く)914作品のタイトルが年代順に掲載されています。
各作品の掲載情報は「◼️タイトル」以下、「企画・製作(会社)、作家名、制作スタッフクレジット、出演者(声優)クレジット、委託者、配給会社、巻数、尺(長さ・再生時間)、フィルムフォーマット、画面サイズ(画郭)、色、音、その他の特徴(技術)、公開日、封切館、解説、略筋、内容、受賞歴」などで構成されています。
目録改訂作業について
NPO法人プラネット映画保存ネットワークは、2020(令和2)年度より文化庁メディア芸術アーカイブ推進支援事業の助成を受け、「神戸映画資料館所蔵アニメーションフィルムのデジタルアーカイブ事業」を実施してきました。神戸映画資料館は、その母体であるプラネット映画資料図書館が1970年代から収集・保存してきた約2万本の映画フィルムを収蔵しています。なかでも、日本アニメーションの揺籃期に作られた漫画映画のコレクションには、他のフィルムアーカイブが所蔵していない貴重なフィルムが含まれます。
「神戸映画資料館所蔵アニメーションフィルムのデジタルアーカイブ事業」では、新収蔵アニメーションフィルムの目録作成と所蔵フィルムのデジタル化、作品情報の掲載雑誌や検閲時報など文献資料の調査、成果発表を兼ねた発掘映画祭での上映、そして、これらを通して得られた情報による『日本アニメーション映画史』作品目録の部分的な改訂をおこなってきました。
作品目録の改訂作業は、渡辺泰による2016年度からの追調査を引き継ぎ、映画史研究家の佐崎順昭を中心に、現存するフィルムそのものとデジタル化で作製した視聴可能な複製を用いて進めています。アニメーション映画には、早い段階から販路が複数あっただけでなく、一つの作品が何度か(別の時期に)市場に出回ることがあり、その度に、尺(再生時間)や音の有無に違いが生じたり、あるいは新しいタイトルが付いたりと、「同一」とはいい難いヴァリエーションがあります。残されたフィルムは限られていますが、こういった点も含めて、改めて丁寧に調査をしていくことで、後補的に編み続けるほかない作品目録の情報源としての質を高め、日本のアニメーション史研究への貢献をめざしています。
ウェブ版の凡例
このウェブサイトは『日本アニメーション映画史』「第三部 資料編 作品目録」の新版をウェブ版として提供するもので、随時改訂を加えていくものとします。当時、目録編纂をおこなった安井喜雄のもと掲載情報をテキスト化し、そのデータを基本に下記の新項目を加えて構成します。
- 作品タイトル(掲載順)に一意の番号を振り「リストID」とします。( 例:NAE0001)
- 作品タイトルの初版掲載箇所を「掲載ページ」とします。
- 書籍版からの転記データに改訂のある場合は、該当項目を上書きし「更新履歴」に記録します。
- 改訂に際し参照された神戸映画資料館収蔵フィルムを「[KPFA収蔵ID]」に表示します。
- 神戸映画資料館収蔵フィルムの調査において、作品目録のタイトルとフィルム上のタイトルが同一ではない場合、「別タイトル」として追記します。
- 同一作品とはいえないものの、派生作品であることが明白な作品については、その作品タイトルを「別バージョン」に追記します。
なお、書籍の凡例(191頁)には、「フィルム・サイズは原則として、35ミリ、モノクロ、スタンダードであり、16ミリ、カラー、シネマスコープ等はその都度記載した」とありましたが、ウェブ版では省略をせず、「フォーマット」と「色」の項目に、それぞれ「35mm」と「白黒」を記載しています(「スタンダード」は、用語が曖昧なため不記載)。また、「メートル数の下の時間は、サイレント版は16コマ映写、トーキー版は24コマ映写のランニングタイムをフィルム長から換算したもの」とありましたので、「尺」と「時間」に情報がある場合は、「音声」の項目を補足しました。
事業主体:NPO法人 プラネット映画保存ネットワーク
ウェブサイト制作クレジット
制作:松山ひとみ
協力:福田一史、水谷嘉宏、三原鉄也
監修:安井喜雄
調査研究:佐崎順昭、野中和隆、板倉史明、佐野明子、松山ひとみ
フィルム調査:衣川太一
デジタル化:麓貴広、橋本英治
デジタル化協力:神戸芸術工科大学
事務局:田中範子
本サイトは令和6年度文化庁メディア芸術アーカイブ推進支援事業の助成を受け制作した。
書籍『⽇本アニメーション映画史』作品⽬録 新版データベース化に関する令和5年度実施報告書
書籍『⽇本アニメーション映画史』作品⽬録 新版データベース化に関する令和6年度実施報告書