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作品タイトル
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くもとちゅうりっぷ
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製作
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松竹動画研究所
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原作者
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横山美智子
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企画
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熊木喜一郎
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作者・スタッフ
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録音:東亜発声株式会社
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動画:桑田良太郎、熊川正雄、土井研二、山本三郎、木村阿弥子
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背景: 村上博彬、岡本庚
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編集:吉村祥
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脚色・演出・撮影:政岡憲三
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撮影補助:本庄吉雄
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音楽
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作詞:横山美智子
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作曲・指揮:弘田竜太郎
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演奏:松竹交響楽団
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唄:村尾護郎、杉山美子
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巻数
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2
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公開年月日
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白系:1943年4月15日
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紅系:1943年4月22日
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封切
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白系
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紅系
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フォーマット
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35mm
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色
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白黒
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音声
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トーキー
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尺(長さ)
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426m
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時間
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16分
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略筋
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可愛いいテントウ虫のお嬢さんは「てんてんてんとう虫、おてんとさまの子...」と唄いながら夏の日を謳歌している。カンカン帽をかぶり白マフラーをした伊達男のクモが得意のノドで、ハンモックにのらないかと誘うがお嬢さんその手にのらない。クモはしつこく迫って来るので、お嬢さん逃げるが、まだ追って来る。こわくなったテントウ虫はチュウリップの花のおばさんにかくまってもらう。チュウリップは花ビラを閉じる。追って来たクモは誘惑が失敗したのに腹を立て得意の糸のなげ縄でチュウリップをグルグル巻にしてしまう。一方、雲の上では雷達が遊んでいて嵐を起こす。夜半暴風雨となり、クモは強風に吹飛ばされそうになる。最初は糸を木の枝に巻きつけて頑張ったがとうとう吹き飛ばされる。風に流さ れながらもミノ虫の家を奪って頭からかぶり傘がわりにするギャグもある。最後は降りしきる雨の中を風と共に池へ落ちて沈んでしまう。翌朝、昨夜の強風で大半の花々は倒れ花びらも散っていたがクモの糸で巻かれたチューリップの花は健在で、出て来たテントウ虫は明るい太陽の光を浴びて嬉しそうに歌を唄う。
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解説
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原作は朝日新聞の懸賞小説に「緑の地平線」が当選し作家になった横山美智子の「よい子 つよい子」の童話集の中の一編。テントウ虫の歌を唄ったのはビクターの童謡歌手の杉山美子。新興映画の子役としても活躍、のち大映女優となる。クモ役は藤原歌劇団のバス歌手の村尾護郎。プレ・レコによる作画システムで、製作。音楽は弘田竜太郎指揮による松竹交響楽団で80何名というオーケストラは日本の動画では最初といわれている。この映画の動画家は延べ人員では568人に達したそうだ。松竹京都作品「家」(監督・倉谷勇)に併映、白系で公開された。テントウ虫のキャラクターは子役時代のデコちゃん高峰秀子によく似ていた。そのテントウ虫が時折見せるコケティッシュな表情、ポーズには女のエロティシズムが感じられる。ジゴロタイプのクモのキャラクターは逸品で、パイプをくわえカンカン帽をはすにかぶっているが帽子を取ると醜い中年男のいやらしさがあらわれる。唇の厚いのはニグロを表現しているのだろうが、戦前のカルピスの広告の黒人を連想させる。今村太平が戦時中の映画旬報(18年3月1日号)に「最近の漫画映画」と題し、 桃太郎の海鷲、くもとちゅうりっぷ、フクちゃんの奇襲、の三本の映画評を寄せているが、くもとちゅうりっぷ、の批評の最後に「不充分な技術条件の下に、ウォルト・ディズニーのシリー・シンフォニーに迫った佳作として推賞するに足るものがある」と書いているが全く同感だ。戦時中の作品とは思えない詩情みちあふれた映画詩だった。なお暴風雨のシーンで雨滴が空から落ちて来るシーンはアニメーターが実際に降る雨をつぶさに研究して描いたものだそうだ。ライブ・アクションが一切使われていないことも特筆すべきである。
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リストID
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NAE0416
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掲載ページ
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229